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8月9日
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上野の東京文化会館の小ホールで行われた辻森公恵さんのピアノコンサートへ行ってきました。

 

身長153cmの小さな身体(手)で、ダイナミックなベートーヴェンを力強く奏でる辻森さんの演奏を聴いていて、私は加山又造先生のことを

思い出していました。何メートルある屏風絵や、天井画を何枚も描かれた故・加山先生は、身長160cm弱の小柄な身体でした。

「ボクはねぇ、身体が小さかったから、大きなものに憧れたんだよ」と、ほんの1年の間受け持ってくださった美術学校での指導中に、

この言葉は何度か聞いたように記憶しています。

私は、といえば、170cmの標準的な身体を両親からいただいておきながら、絵はどんどん小さくなってくる始末。

「別にでかけりゃいいってもんでも・・」と言い訳を口にしますが、やはりよほどの、“ダイナミックさへの憧れ”というものを心の底に秘めている人こそ、

求められなくても、おのずからその道を歩いて行き、いつか形になっていく、という過程を耐え抜き(あるいは楽しめ)、

本当にエネルギーのいる行為を、自分のモノにしていけるのだと思います。

 

辻森さんのダイナミックなベートーヴェンを聴いていて、そんなことを思いました。前半の12・14番はとても良かった。

しかし後半、中期ピアノソナタの“限界に挑戦”のような23番では、余裕がないために“遊び心どころじゃない”という感じを受け、

手のでかいピアニストのほうが有利なのかもしれないなぁ、という現実の厳しさも少し感じました。

27番はコントラストが少なく、渋い魅力がわかるところまで達していない私には、この曲の良さがよくわかりませんでした。

 

アンコールではバッハを弾いてくださいました。平均律の一曲でしたが、できれば前奏曲のほうではなく、

フーガのほうを弾いていただきたかった、と思ってしまった私は、ちょっと贅沢すぎでしたか。